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口伝えに楽器やうたが伝わるのが一番いいと思っている。こんな贅沢はないだろう。目の前でお手本が演奏しているのだから。 と思ったのは、前の「ひとりごと」に書いた映画「僕のスゥイング」でチャボロ・シュミットがトレーラー・ハウスの車内で少年にギターを教えるシーン。譜面は出てこない。弾いて見せ、口でああだこうだとアドバイスしていく。これはケルト音楽の場合もそうだった。ブルースもフォークも。大衆的な音学はシンプルな様式が多いので少しずつ憶えていけるのだ。ぼくもギターやベースをやりはじめたころは譜面も読めなくて、ただひたすらにレコードを聴きその感動した音楽を再現するようコピーをした。譜面に頼らず音の中に全神経を預けていくことってどれだけ大事なことか、自分の若かった頃を思い出し、そう確信する。感覚が大事なんや。「赤い鳥」時代に仲間のひとりとこのことで口論したことがあった。正確さ、ち密さなど大事な要素なのだが、それ以上にリズムが重要だと思う。リズムにはビートやグルーブなど重要な要素が含まれている。目の前でお手本を聴きそれを真似ていく時、譜面では書き表わされないことがある。
ポルトガルのテレビ番組で若い生徒がポルトガルギターの先生に習うシーンでも譜面を使っていなかった。 同じように邦楽でもお師匠はんについてうたいを覚えるのもそうだった。僕の育った路地裏でも毎晩口承音楽会があった。
指から弾ける弦の響き、やわらかな息遣い、悲しいビブラート、体を震わせ心の奥底から出てくる音。
テクニックなんてどうでもいいのだ。
日本の音楽に欠けているものがここにあると思う。